「サードプレイス実業団」という言葉は、近年、アスリートのキャリア形成やスポーツ界の多様化という文脈で注目されつつある概念です。これは、従来の企業に所属する実業団選手とは異なり、特定の企業に直接雇用されることなく、独立した形で競技活動を行うアスリートやチームを指すことが多いと考えられます。

**サードプレイス実業団の定義と背景**

伝統的な実業団は、企業が従業員としてアスリートを雇用し、企業スポーツとして活動を支援する形態でした。しかし、アスリートのセカンドキャリア問題、働き方の多様化、そしてスポーツのプロ化・独立化の進展により、新たな活動形態が模索されています。

「サードプレイス」という言葉は、自宅（プライベート）、職場（ワーク）に続く「第三の場所」という意味合いで使われます。サードプレイス実業団の場合、この「第三の場所」は、所属企業でもなく、かといって単なる練習場でもない、アスリートが自身の意思で選択し、創造的に活動できる場を指します。これは、特定の企業との契約に縛られず、より自由な環境で競技に集中したり、自身のキャリアをデザインしたりすることを可能にします。

**サードプレイス実業団の特徴**

*   **独立性:** 特定の企業への所属義務がなく、複数のスポンサー契約や個人での活動を通じて収入を得ることが多い。
*   **柔軟性:** 練習時間や場所、競技への取り組み方などにおいて、比較的自由度が高い。
*   **キャリアデザイン:** 競技活動だけでなく、セカンドキャリアを見据えた自己啓発や起業、地域貢献活動なども並行して行うことができる。
*   **コミュニティ:** 同じような境遇のアスリートや、支援者、ファンなどとの独自のコミュニティを形成する。
*   **収益モデルの多様化:** 企業からのスポンサーシップ、クラウドファンディング、イベント出演、グッズ販売、オンラインサロン運営など、多様な収益源を確保しようとする。

**サードプレイス実業団のメリット**

アスリートにとってのメリットは、まず第一に「自己決定権の拡大」が挙げられます。自身の競技人生を主体的にデザインできるため、モチベーションの維持や、より質の高いパフォーマンスに繋がる可能性があります。また、競技引退後のキャリアについても、早い段階から準備を進めることができ、スムーズな移行が期待できます。

企業側にとっても、直接的な雇用リスクを負わずに、アスリートやチームを支援できるというメリットがあります。CSR活動の一環として、あるいは新たなマーケティングチャネルとして、サードプレイス実業団への支援を検討する企業も出てくるでしょう。

**サードプレイス実業団のデメリットと課題**

一方で、サードプレイス実業団には課題も存在します。最も大きな課題は「経済的な安定性の確保」です。企業からの安定した給与が得られないため、収入源を確保するための営業活動や自己プロモーションが不可欠になります。これにより、競技に集中する時間が削られる可能性もあります。

また、所属企業がない場合、福利厚生や社会保険などの面で不安が生じることもあります。これらを個人で手配する必要があるため、専門知識やリソースが必要となります。

さらに、組織としてのバックアップ体制が手薄になる可能性も指摘されます。怪我をした際のケア、メンタルサポート、法務・税務に関するアドバイスなど、企業実業団であれば提供されるサービスが、個人や小規模なチームでは十分でない場合があります。

**サードプレイス実業団の事例（想定される形態）**

現時点では「サードプレイス実業団」という名称が法的に確立されたものではないため、具体的な事例を特定することは難しいですが、以下のような形態が該当すると考えられます。

*   **個人で複数のスポンサーと契約し、活動するプロアスリート:** 特定の企業に所属せず、自身のブランドを確立して活動する。
*   **共同でチームを立ち上げ、資金調達やイベント運営を行うアスリート集団:** 企業からの支援を受けつつも、運営主体はアスリート自身にある。
*   **地域密着型のスポーツクラブで、企業からの協賛を得て活動するチーム:** 地域社会との連携を重視し、多様なステークホルダーと共存する。
*   **eスポーツチーム:** 企業とは独立した運営母体を持つチームが、スポンサーシップや大会賞金で活動する。

**今後の展望**

サードプレイス実業団という概念は、スポーツ界における新たな選択肢として、今後さらに注目されていく可能性があります。アスリートの多様なキャリアパスを支援し、スポーツの裾野を広げる上で、重要な役割を果たすことが期待されます。ただし、その持続可能性を高めるためには、経済的な安定化、支援体制の構築、そして社会的な認知度の向上が不可欠となるでしょう。

この形態が普及することで、アスリートはより自身の可能性を追求し、スポーツを通じて社会に貢献する道が開かれるかもしれません。